知的好奇心のスイッチを押すゲーム Kai氏が描くGeoGuessrの未来 【TAIYORO INTERVIEW】
プレイヤーとしてGeoGuessrの奥深さに魅了され、現在は国内最大級のオフライン大会「RASHINBAN」の主催者としてシーンを牽引するKai氏。彼の持ち味は、論理的な思考力と、コミュニティ全体を温かく見つめるバランス感覚だ。 なぜ彼は、このゲームにそこまで情熱を注ぐのか。GeoGuessrが持つ独自の価値から、競技シーンの発展、そしてその先に見据える社会との接点まで、彼の描く未来像を紐解く。
2025-09-05 19:46
自己紹介
Kaiと申します。「RASHINBAN」という大会で、主催者の一人を務めています。GeoGuessrは2023年の夏頃からプレイし始めました。
プレイヤーとしてこのゲームの奥深さに魅了され、その面白さをみんなで共有したいという想いから、YouTubeでの発信や大会の企画に携わっています。
GeoGuessrに出会い、ハマったきっかけ
もともと旅行が趣味だったんですが、コロナ禍でなかなか外に出られなくなってしまって。そんな時に、弟からGeoGuessrというゲームがあると教えてもらったのがきっかけです。やってみたら、家にいながら世界中の景色が見られて「これだ!」と思いました。
特にハマったのは、2023年の秋にあった「GeoGuessr World Championship(以下、World Championship)」あたりからですね。対戦モードの「Duels」にのめり込みました。
このゲームの魅力は、知らないことを知る楽しさを高速で体験できるところだと思っています。ある公認プレイヤーの方が「興味のボタンを押し続けてくれる装置」と表現していましたが、まさにその通りで。知らない景色が出てきて、「ここはこうなってるんだ」と調べてみたくなる。仮説を立てて、それが合っていても間違っていても、新しい学びがある。そのサイクルがすごく気持ちよくて、ずっと続けています。
得意とするモードや好きなマップ
普段はNo Move(移動なし)しかプレイしません。動けないけれど周りを見渡せるこのモードが、一番知識勝負になりやすくて好きですね。初心者の方には「動けないなんて運ゲーじゃないか」と思われがちですが、移動ができないからこそ、対戦相手と全く同じ情報だけで勝負することになります。そのため、最も実力が反映されやすいモードだと考えています。
ただ、一番好きなのは3秒NMPZ(移動・パン・ズームなし)です。以前自分でこのルールの大会を開いたこともあるんですが、考える暇がなく、見た瞬間の印象で判断するしかない。その潔さが好きです。
好きなマップは「A Rainbolt World」で3秒NMPZとの相性が抜群ですし、他の様々なフォーマットにも適した名作マップだと思います。苦手な地域はヨーロッパですね。景色が似ているので(笑)。
一番印象に残っている試合
一つは、2023年のWorld Championshipで、日本のしいな選手が当時強豪とされていたTopotic選手に勝利した試合です。日本人が初めて世界大会で勝った歴史的な一戦で、「日本にこんなに強い人がいるんだ」と感動しました。
もう一つ、最近の試合では、今年のWorld Championshipのヨーロッパ予選でBlinky選手が見せたパフォーマンスが衝撃的でした。対戦相手も非常に強い選手だったんですが、まったく何もさせずに圧勝していて。彼のプレイを見ていると、自分がまるで初心者に返ったような、「うわ、何これ」という純粋な驚きを感じました。人類史上最高のパフォーマンスだったと思います。
思考法・地図の見方にある流儀
僕は感覚的にプレイするのも好きなのですが、一方で効率重視の理論派でもあります。社会人なので、限られた時間で強くなるために、情報の優先順位付けと取捨選択を徹底しています。
例えば、ある国を特定するためのヒントが複数ある場合、より汎用性が高く、強力な手がかりから順番にインプットしていく。そうやって網羅的に情報を整理し、効率的に知識を吸収していくスタイルです。それが自分の強みだと思っていますが、一方で未知の状況に弱かったり、市外局番や地名はほとんど覚えていなくて、尖った武器がないという弱みでもあるかもしれません。
あとは、地名を見つけた時に、地図上からその地名を素早く探し出す「周辺視野でのスキャン」は得意な方だと思います。
ちょっと変わったクセ
これはGeoGuessrプレイヤーであればだいたいそうだと思うのですが、海外旅行に行くと、街中に電柱がないヨーロッパなどでは、わざわざ郊外まで足を延ばして電柱を見に行ったりします。
GeoGuessrでよく見るガードレールや標識といったアイテムは、現実世界で見つけるとやっぱりテンションが上がりますね。ゲーム内アイテムをリアルで見つけた、みたいな感覚に近いです。
プレイヤーと大会運営者の違い
純粋なプレイヤーとして楽しんでいた頃は、正直なところ、このゲームの教育的価値みたいなものはあまり意識していませんでした。
でも、大会運営という立場で外部の方と話す機会が増えると、「町おこしに使えないか」「地理や文化の学習に繋がる」といった文脈で注目されていることを知りました。競技プレイの世界と、社会がGeoGuessrに抱くイメージとの間には、まだ少し距離がある。その間を埋めていくのも、自分たちの役割なのかなと思うようになりました。
また、RASHINBANでは個人主催のコミュニティ大会とは違って、参加者、観戦者、そしてスポンサーの方々、関わるすべての人にとって価値のあるものを作らなければいけない、というプレッシャーというか責任をものすごく感じますね。その分やりがいも大きいです。
コミュニティで大切にしたい軸
やはり「競技性」が中心にあるべきだと考えています。そこがこのゲームの一番面白い部分なので。ただ、僕の場合は、トップ層を引き上げるだけでなく、初心者の方にも手厚くケアをしながら、コミュニティ全体の裾野を広げていきたいという想いが強いです。両方があって、初めてコミュニティは健全に発展していくのだと思います。
今後の動向
まずはRASHINBANを成功させることが第一ですが、プレイヤーとしてももっと強くなりたいという気持ちがあります。ゲームへの理解度が深まれば、運営者としてもより良いものを作れるはずなので。
そして、大会で作った熱狂を一過性のものにせず、人々が集える「居場所」を作っていくようなコミュニティ施策にも、10月以降は力を入れていきたいです。 将来的には、GeoGuessrが持つ「年齢を重ねても楽しめる」「教育や文化との親和性が高い」といった独自の強みを活かして、社会との接点をうまく作っていきたいですね。単なるゲームで終わらせず、もっと大きな可能性を広げていくのが僕の野望です。
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Kai氏の公式アカウント
取材: TAIYORO編集部