2XKO二冠王・いこあん選手が語る、“研究と挑戦”で切り拓くアジア代表への道 【TAIYORO INTERVIEW】
2024年、ドラゴンボールファイターズのワールドツアーファイナルにまで上り詰めたプレイヤーがいる。 3on3格闘ゲームで世界を回ってきたその男は、いま新しいタイトル『2XKO』で、再び日本・アジアの最前線に立っている。 JAPAN KNOCKOUT(JPKO)優勝に続き、海外大会TGUでも優勝。 FIRST IMPACTプログラムの中で連覇を果たした、いこあん選手だ。 「渋谷で優勝した後も、どこかで『運が良かっただけなんじゃないか』って思ってたんですよね」 そう笑いながらも、言葉の端々からは、自分のプレイと真剣に向き合い続けてきたストイックさがにじむ。 ドラゴンボールファイターズから2XKOへと歩んできた軌跡、研究し続けるトレモ哲学、そして“アジア代表”として世界に挑もうとする今の心境まで、じっくり語ってもらった。
2025-12-03 20:00
自己紹介
まずは自己紹介からお願いします。
「いこあんと申します。以前は『ドラゴンボールファイターズ』という3対3のチーム格闘ゲームをメインでプレイしていて、 ワールドツアーのファイナルにも何度か参加させていただきました。
いまは『2XKO』を中心に活動していて、Twitchで不定期にはなるんですけど配信もしています。 もしよければ、ぜひ遊びに来ていただけると嬉しいです」
ドラゴンボールファイターズ時代から海外遠征も重ねてきたいこあん選手。
その“元・世界を回るチームゲーマー”が、なぜ2XKOに全力を注ぐことになったのか。
2XKOに出会い、ハマったきっかけ
ドラゴンボールファイターズのワールドツアーファイナル。 シーズンの締めくくりとして開催されたその場で、いこあん選手は転機を迎える。
「ファイナルの会場で、海外の選手たちと『このゲームの後、何やる?』みたいな話になったんですよ。 そこで『俺は2XKOやるつもりだよ』っていう人が、思った以上に多くて。
実は2XKO自体は、去年のアルファテストのときから触ってはいたんです。 ただ、その時はトレーニングモードでちょっとコンボを試すくらいで、深くやり込むところまでは行ってなくて。
でもファイナルの場で、信頼している海外選手たちが『次は2XKOだな』って口々に言っていて。 それを聞いて、『じゃあ僕も、みんなが本気でやるならしっかりやってみようかな』と火がついた感じでした」
もともと格闘ゲーム以外のジャンルにはあまり手を出さず、「本当に熱中できるタイトルじゃないと、そもそも触らない」というタイプ。 ドラゴンボールファイターズのワールドツアーがひと段落してからは、半年ほど“ゲームから離れていた”時期もあったという。
「そんな中で、『これはまた本気でやり込めるかもしれない』と思えたのが2XKOでした。 どうせやるなら、ちゃんと大会で結果を出したいタイプなので、
JAPAN KNOCKOUT(JPKO)が発表された時点で、『よし、じゃあ一旦この大会を目標にやり込もう』と決めましたね」
いこあんさんにとっての2XKOの楽しみ方・魅力
2XKOのどんな部分に魅力を感じていますか?
「まず、2対2の“チームゲーム”という形だからこその自由度の高さですね。
現状、使えるキャラクターが11体いて、そこから2キャラ選ぶ。 さらにフューズが5種類(Double Down / 2X / Free / Sidekick / Juggernaut)あるので、 組み合わせは本当に“無限”と言っていいくらいあります。
大会シーンだと、ある程度は強い組み合わせに収束してきてはいるんですけど、 それでも『もしかしたら、こういう構成や戦い方も強いんじゃないか?』という研究の余地が常にある。
そこが一番の魅力だと思っています」
いこあん選手自身は、現在はヤスオ+エコーをメインに使用。
リリース初期はヴァイ+ヤスオのチームも試していたと言う。
「以前やっていたゲームと“動き”が似ている技があったりして、
『このキャラは、昔やっていたあの技を応用できそうだな』という発見も多いんですよね。 そういう意味でも、自分の格ゲー歴がそのまま活かせる瞬間があって楽しいです」

トレーニングモードで積み上げる「研究型」プレイスタイル
2XKOの話題になると、いこあん選手のテンションがさらに一段上がるのが「トレーニングモード」だ。
「僕、トレモが本当に好きなんです。
フューズも多いし、キャラも多いし、『このキャラとこのキャラって、実は相性いいんじゃないか?』みたいな妄想をしながら、 トレモでひたすら検証していくのがすごく楽しくて。
自分がそのチームを大会で使うかどうかは別として、 『この状況ではこういうセットプレイがあるんだ』『この組み合わせだとこんな択が取れるんだ』みたいな“豆知識”を 自分の中にどんどん蓄えていく感覚が好きなんですよね」
日々の練習ルーティンも、徹底して“研究型”だ。
「2XKOを起動したら、ほぼ確実にまずトレモから入ります。 メインで使っているキャラクターの基本コンボを、反復練習でミスなく出せるようにしてから、 セットプレイの確認に移って、そこから“ガードの練習”に入るのがルーティンですね。
このゲーム、キャラによっては対処が難しい技も多いので、 パリィなどの防御システムを駆使して、どうやって凌ぐかをひたすら反復で体に染み込ませる。 これは毎日欠かさずやっています」
さらに、オフライン大会前には、対戦相手のリプレイ分析も入ってくる。
「JPKOのときはベスト8の顔ぶれが事前にわかっていたので、 特に意識したのが2WINzなど決勝で当たる可能性が高い相手のリプレイですね。
配信アーカイブやゲーム内リプレイを見ながら、 『ここでよくこの行動をしているな』『もしかしてここは癖になっているのかも』というポイントを洗い出して、 『じゃあこういう場面を作れれば、このミスを誘発できるかもしれない』と仮説を立てていく。 そうやって準備していった結果が、JPKOの優勝にも繋がったと思います」
「まずはシステム理解を」――初心者へのアドバイス
これから2XKOを始める人や、伸び悩んでいる人にアドバイスをするとしたら?
「最近、昔の格ゲー仲間から『2XKO始めたいから教えて』って言われることが増えてきたんですけど、 共通して感じるのは“チュートリアルをちゃんとやっていない人が多い”ということですね。
このゲーム、キャラを動かすこと自体ももちろん大事なんですけど、 それ以上に“ゲームシステムの理解”がめちゃくちゃ重要だと思っていて。 カジュアルマッチで初心者の方と当たった時に、 『キャラの動きはできているけど、システム面の理解が足りていないから、一方的な展開になってしまっているな』と感じることが結構あります。
チュートリアルは、そこまで難しいことは言ってないんですけど、 すごく大事なことがちゃんと書いてあるんですよ。 そこを飛ばしてしまうと、システムを理解している側からすると
『あ、この知識を相手が持っていないから、この行動だけで勝てちゃうな』という状況が生まれてしまう。
なので、まずは自分のキャラのコンボよりも先に、 “このゲームにはどういうシステムがあって、どんな行動が強いのか”を理解すること。 それが、一番の近道だと思います」
ソロプレイと“2人連携”、それぞれのむずかしさ
2XKOは2対2のチームゲームだが、いこあん選手は“基本ソロでのプレイ”を選んでいる。
「一般的な格ゲーは1対1が多いので、初心者の方からすると 『いきなり2キャラ覚えなきゃいけない』という時点でハードルが高いんですよね。
僕の場合は、もともと3対3のチームゲーム(ドラゴンボールファイターズ)をやっていたので、 1人で複数キャラを動かすこと自体には抵抗はあまりないんです。
そこは、自分にとってのアドバンテージかなと思っています」
一方で、“本当の意味での2人連携” 人間2人でタッグを組む難しさも、よく理解している。
「誰かと本気でタッグを組んで大会に出るとなると、連携はやっぱり難しいですね。 2人でわいわい言い合いながらやるのは絶対楽しいと思うんですけど、 “勝つための最適解”を突き詰めていくと、 自分の場合は1人で2キャラを動かした方が安定しやすい、という感覚も正直あります。」

JPKO優勝からTGU制覇へ
「運じゃなかった」と思えた瞬間
JPKOの優勝は、いこあん選手にとって大きなターニングポイントだった。 だが、その裏側には意外な葛藤もあったという。
「渋谷のJPKOは、ずっと目標にしていた大会だったので、優勝した瞬間は本当に嬉しかったです。
ただ、心のどこかで『もしかして、運が良かっただけなんじゃないか?』っていう不安もあって。 僕、結構心配性で、“たまたま良い流れが続いただけなんじゃないか”みたいに考えちゃうところがあるんですよね」
そんな中で迎えたのが、海外大会TGU。いこあん選手は自分に、ひとつの条件を課していた。
「TGUで優勝できたら、『もう自分の実力だって認めていいだろう』って、自分に言い聞かせていて。
結果的にTGUでも優勝できたことで、ようやく 『あ、それなりにちゃんと実力が伴ってきたんだな』と自信を持てるようになりました」
ドラゴンボールファイターズ時代は、結果が出始めるまでに4〜5年かかったという。
「以前のゲームでは、上位勢といい勝負ができるようになるまでに、 本当に何年もかかっていて、“スタートダッシュは遅いタイプだな”という自覚もあったんです。
だからこそ、新しいタイトルである2XKOで、 こんなに早いタイミングで結果を残せたのは、自分の中でも成長を感じられる経験でしたね」
FIRST IMPACTプログラムと、恵まれた競技環境への実感
FIRST IMPACTプログラムや、今の2XKOシーンをどう見ていますか?
「まだアーリーアクセスの段階から、賞金付きの大会やオフラインイベントを 公式がこうして用意してくれているのは、選手として本当にありがたいことだと思っています。
JPKOもTGUも、どちらもオフラインで、大規模なブースやステージを用意していただいていて。 ああいう環境でプレイできるのは、やっぱり格闘ゲーマーとして嬉しいですし、 2XKOというゲーム自体のポテンシャルを、改めて感じさせられました」
シーン全体を見渡すと、現時点では「アジアはまだ人口が少なめ」と感じているという。
「アメリカやヨーロッパに比べると、アジアのプレイヤー人口は、 まだどうしても少ない印象があります。
だからこそ、FIRST IMPACTのようなプログラムを通じて、 アジアのシーンがもっと盛り上がっていけばいいな、と思っています。」

アジア代表として挑むフロスティ&韓国大会
いこあん選手の挑戦は、JPKOとTGUで終わりではない。
この先には、Frosty Faustings(フロスティファウスティングス)と韓国でのFIRST IMPACT最終大会が控えている。
「出場するからには、もちろん優勝を目指したいと思っています。 ただ、現状、2XKOの人口やシーンの盛り上がりは、 アメリカやヨーロッパの方が一歩先を行っているという感覚があって。 そこに“アジア代表”みたいな形で自分が参加するとなると、 正直、プレッシャーも大きいです。
僕の結果次第で、『アジアってこのくらいのレベルなんだな』と 見られてしまうかもしれない、という緊張感もあります」
それでも、言葉のトーンはどこか楽しげだ。
「昔のゲームで戦っていた海外選手たちが、 いまは2XKOのシーンでも活躍しているので、 そういった選手と“別のゲームで再戦できる”というのは、素直に楽しみなんです。
JPKOとTGUの結果で、“マグレじゃなかった”という自信もつきましたし、 あとは自分の実力を出し切るだけだと思っています」
さらに、韓国でのFIRST IMPACT最終大会にも参加予定だ。
「たぶん、僕が出られるFIRST IMPACTの大会は、韓国が最後になると思います。
そこでもしっかり結果を出せれば、さらに自信を持ってフロスティに臨めるはずなので、 もうひと頑張りしたいですね」
シーンを牽引する旗振り役としてのこれから
今後の展望について教えてください。
「直近では、さきほど話した韓国大会とフロスティへの挑戦が大きな目標です。
そのうえで、もう少し長い目で見ると、“2XKOのアジアシーンをどう盛り上げていくか”ということも、 自分の中ではすごく大きなテーマになってきています」
いこあん選手は現在、完全なフリーの立場だ。 賞金はありがたく生活費に充てつつ、スポンサーからのオファーも歓迎したいと語る。
「いまは本当にフリーの状態で活動していて、 ありがたいことに大会の賞金で生活の足しにさせていただいています。
もしどこかのチームさんやスポンサーさんに興味を持っていただけたら、 ぜひお声がけいただけると嬉しいですね」
同時に、“プレイヤーとして強くなる”だけでなく、
“シーンの旗振り役”としての役割も意識し始めている。
「アジアの2XKOシーンは、まだ他地域に比べると規模が小さいので、 配信などを通じて『こうやって練習すればうまくなれるよ』という情報を、 もっと発信していきたいと思っています。
自分の配信で上達法を共有したり、質問には可能な限り答えたりして、 『このゲーム、面白そうだな』『やってみようかな』と思ってもらえるきっかけを作れたら。
アジア全体のレベルが上がれば、当然、自分自身もそれに比例して強くなれるはずなので、 そういう意味でも“シーンを牽引する存在”になれたらいいなと思っています」
最後に、いこあん選手は少し照れくさそうに、こう付け加えた。
「本当に、自分に聞いてもらえれば、ゲームのことなら何でも答えます。
『2XKOうまくなりたい』って人がいたら、ぜひ遠慮なく聞いてください。 可能な限り、全部お答えしますので」
JPKOとTGUを制し、アジアから世界へ。
“研究で積み上げるタイプ”のチャンピオンは、今日もトレモと配信を行き来しながら、 2XKOという新しいステージで、自分とコミュニティの未来を切り拓いている。
いこあん選手の公式アカウント
取材: TAIYORO編集部