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「タイムアウトは戦術じゃない」 トップリーグが示した45秒の本当の役割【SiegeX戦術解説 #5】

「タイムアウトは戦術じゃない」 トップリーグが示した45秒の本当の役割【SiegeX戦術解説 #5】

Rainbow Six Siege Xの競技シーンで使われた戦術を徹底解説。シージXならではの要素なども取り入れつつ解説します。

2026-01-09 14:29


『Rainbow Six Siege X』は、攻撃側は壁や床を破壊して防衛拠点を攻略し、防衛側は壁の補強や新たな射線の構築によって攻撃を抑える、ユニークなゲームスタイルを持ち合わせています。

そのため、トップリーグで活躍するプロ選手たちの試合では、さまざまな戦術が繰り広げられ、その駆け引きが非常に魅力的です。

本記事では、その魅力を少しでも伝えられるように解説していきます。

今回は、R6 Majorで話題となった、タイムアウト時におけるコーチの指示内容を取り上げます。

シージの競技シーンでは、1マップにつきタイムアウトを取れるのは1度のみで、その時間も45秒と非常に限られています。

その貴重な時間の中で、コーチはどのようなことを選手に伝えているのかを紹介していきます。

Lylounコーチ(Team BDS(現Shifters))

一人目は、トップリーグで唯一の女性コーチとして活躍するLylounコーチです。

グループステージ最終日、Ninjas in Pyjamas戦の1マップ目・クラブハウスにおける防衛で、開幕から3ラウンド連続で落とした状況下で取られたタイムアウトでした。

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「みんな、一緒に乗り越えよう。難しいよ。思うようにいかないけど、大丈夫。解決策を見つけ出せば、きっとうまくいくから。

互いにコミュニケーションを続けよう。意見を共有しよう。重要なのは一つのアイデアに集中することだと思う。 例えば最初のプレッシャーに集中するなら、全員でそれに集中して相手の懐に入り込もう。

今は相手に全部開けられてしまって、最終的に一気に詰められて潰されてる状態。 だから最初のプレッシャーに集中すること。それとも一度引いて距離を取り、相手が動かない隙を 狙って後半に攻めるかだ。

最も重要なのは、同じ認識を持つことだ。 その調子で続けよう、そのエネルギーを持ち続けて!心配しないで。必ず乗り越えられる!」

まずはメンタル面のケアから入り、試合中に意識すべきポイントを明確化しています。さらに、選択肢を2つに絞ることで、ラウンド中に考える要素を限定しました。そして最後は、選手を鼓舞する言葉で締めくくられています。

試合アーカイブ

Lagonisコーチ(Wildcard)

2人目は、Team Liquidなどで選手として活躍し、2025年6月にコーチへと転向したLagonisコーチです。

グループステージ突破を決めた試合のピックマップであるナイトヘイヴンラボにおいて、前半の攻撃で1-0から2ラウンド連続で落とした場面で取られたタイムアウトでした。

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「現地周りをしっかり取って、とにかくみんなでプッシュしよう。

現地の周りのポジションに入れたら、もっとキルを狙って動けると思う。

でも昨日のカフェみたいにやりすぎないでほしい。

現地に一番近いポジションまで行こう。そこからならみんなエントリーできるから、とにかくプッシュしよう。

時間をかけすぎたり、プランの外でプレイしたりしないように。待たずに、3-2-1で合わせるだけだ。

君たちは押し続けられる。もう2回連続(で負け)だったよね?

この理由で負けるのはやめて、ラウンドの流れを止めないように押し続けよう。

よし、キル取った。廊下を押し続ける。

ボムサイトのすぐ手前だ。キル取ったから押し続けれる。

ペースは維持しつつ、必要なら終盤でキルを狙え。キルを狙え。

俺たち、今最高のプレイをしてるぜ。いいか?」

このタイムアウトでは、攻撃時に取るべき行動を明確にしました。

『よし、キル取った。廊下を押し続ける。ボムサイトのすぐ手前だ。キル取ったから押し続ける。』といった言語化を用いて、試合中における理想的な思考を選手に伝えています。

そして最後には、『キルを狙う』という明確な目的を打ち出し、非常にストレートで情熱的な、ブラジル出身のLagonisコーチらしい声かけで締めくくっています。

試合アーカイブ

Fabianコーチ(M80)

最後に取り上げるのは、やはりこの人。

G2 Esportsなどで選手として活躍した後、コーチとして数々のチームを率い、現在はM80のコーチを務めるFabianコーチです。

M80をR6 Major王者へと導いたFabianコーチのタイムアウトは大きな注目を集めました。

話題となったTeam Secret戦とWildcard戦の2試合におけるタイムアウトの内容を見ていきます。

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①Lower Bracket Quarterfinals, Team Secret戦の1マップ目、国境の防衛において3ラウンド連続で落とした状況でのタイムアウト

「Monty(Montagne)がくるならオリックスを出してもいい。でもな、俺たちが何をしてるかみんな分かってるか?俺たちはただ諦めてるだけだ。

外側のエリアを全部明け渡して、奴らに好き放題させておいて、それなのに「なんで敵がいるんだ?」って驚いてる。

前目のポジションで戦ってそこからライン下げてるか?してない。

やってるのは、最終ラインのポジションにただ籠っているだけだ。

当然、そんなことしてたら奴らに崩されるに決まってる。

今こそ度胸を見せろ。コミュニケーションを取って、戦いどころを自分たちで決めろ。奴らの好きにさせるな。

今俺たちがやってることは、ただ下がって、下がって、下がってるだけだ。一緒に戦え!仲間のために戦え!」

②Lower Bracket Semifinals, Wildcard戦の1マップ目、ピックマップ領事館の攻撃で3ラウンド連続で落とした状況でのタイムアウト

「こんな形で家に帰りたいのか?違う。だったらそのクソみたいな甘えた気持ちを捨てて、チームとしてプレーしよう。

俺たちは波みたいにプッシュ(攻撃)するはずだろ。それだけだ。でも今の攻撃はどうだ?一人はこっち、一人はあっち、一人はナルニア国にでもいるのか?

一緒に動け!そんなに難しいか?3、2、1の声で動いているか?お互いのためにガジェットを使ってるか?違う。何もしてない。

何もしてないから、Baeに好き放題やられてるんだ。

一緒に動け!ガジェットを使え!3、2、1で合わせろ!

ビビって縮こまるのをやめろ。俺はこんなところで家に帰りたくない。 目を覚ませ!このクソみたいな状況をぶち壊して、ひっくり返すぞ!」

まず、相手にどのような形で主導権を握られているのかを具体的に伝え、そのうえで解決策を提示しています。

いわゆるFワードを用いるなど、口が悪くても、その背景には選手たちを奮い立たせる意図があります。この熱さがFabianコーチらしいなと思います。

試合アーカイブ:

vs Team Secret

vs Wildcard

各コーチの共通点

これら4つのタイムアウトに共通しているのは、相手の流れを止めることを目的としている点です。

戦術的な指示を行う場面もありますが、共通しているのは、選手を鼓舞すること、そして目標を明確にすることだったと感じます。

Fabianコーチも自身のポストでこのように述べています。

「タイムアウトは興味深いと思う。

多くの人はタイムアウトは戦略的なものだと考え、次の数ラウンドをどう勝つが全てだと思い込んでいる。

確かに必要な修正点は伝達可能だが、試合前に相手がラウンドで取る可能性のある全戦術を想定していなければ、準備不足だと言える。

もちろん予想外の展開はあちこちで起こるだろうが。

しかし、45秒のタイムアウトでコーチにプレイ方法を指示してもらう必要があるなら、それは単純に準備不足だ。

タイムアウトは細かい判断のためではなく、マクロな問題を修正するためのものだ。流れを断ち切り、時には息をつくためのものでもある。

チームごとにやり方は違いますが、長期的な成功を望むなら、最終的に答えを見つけなければならないのはサーバー内にいる選手たちです。

問題が目の前にあり、1マップにつき約1時間という時間があります。

目の前の状況に反応し自ら適応するチームは、毎ラウンドコーチに戦術を指示されるチームに対して常に勝ち続けます。」

引用元ポスト

試合中の細かな修正点を逐一伝えるのではなく、相手に傾きかけた流れ、傾いた流れを断ち切ることこそが、タイムアウトを用いる理由であると感じられます。

まとめ

今回はタイムアウトに注目した内容でしたが、いかがだったでしょうか?

世界大会では、タイムアウト中のボイスチャットが視聴者にも聞こえるようになっており、そのやり取りが試合のターニングポイントとなる場面も少なくありません。

YouTubeでは、試合後に自動生成ですが、英語字幕が表示されるため、コーチがどのようなことを選手に伝えているかを追うことができます。

ぜひ観戦の際には、タイムアウト中の発言内容にも注目してみてください!